「手順通りに測っているのに、どうしてもグラフが安定しない」と頭を抱える人は少なくありません。この不可解なブレを引き起こす背景には、人体の生理現象であるサーカディアンリズム(体内時計)と、朝の無意識の行動パターンが深く絡み合っています。
第一に知るべき事実は、基礎体温の時間がズレる決定的な理由です。人間の深部体温は一日を通して一定ではなく、体内時計のリズムによって午前4時から6時頃にかけて最も低くなり、起床予定時刻が近づくにつれて活動準備のために自律神経が優位になり自然と上昇を始めます。例えば、普段は朝6時に測っている人が休日に朝8時に測定した場合、睡眠時間は足りていても体内時計のリズムですでに体温が約0.1〜0.2℃上昇しています。逆に睡眠不足で午前4時に測れば平熱より低く出ます。つまり、測定時刻が毎日1時間以上ズレるだけで、折れ線グラフは簡単に乱高下を起こします。
第二に、測定の現場で最も多いトラブルが二度寝した場合の基礎体温の真相です。朝方ふと目が覚め、「まだ起きる時間じゃない」と再び眠りに落ちて本来の起床時刻に測り直す――このシチュエーションにおいて、どちらの数値を採用すべきか迷う読者は多いはずです。生理学的な事実として、体温は「4時間以上の連続した十分な睡眠の直後」に最も安定します。二度寝の浅い睡眠では脳や身体が活動準備を始めており、二度目の測定値は高めに出る傾向があります。そのため、原則として「最初に目が覚めた時点」の数値を記録するのがセオリーです。もし最初の覚醒時に測り忘れて二度寝してしまった場合は、二度寝後の体温を記録しつつ「二度寝あり」とメモを残しておくことが不可欠です。
そして第三の落とし穴が、起き上がってしまった時の対処法です。「アラームに気づかず思わずベッドから立ち上がってしまった」「無意識にトイレに行ってから測定器に手を伸ばした」というケースでは、立ち上がって歩くだけで下半身の筋肉が収縮し、血流と心拍数が一気に上がります。一度でも体を起こして活動を始めると、基礎代謝状態(生きていくための最低限のエネルギー消費状態)は解除されてしまいます。この状態から慌てて布団に戻って測っても、得られる数値は基礎体温として意味をなしません。この場合の最善の対処法は、その日のデータは無理に採択せず「測定不能」としてスキップするか、備考欄に「起床・歩行後」と注記して参考値にとどめることです。無理にガタついた数値を正規データとして組み込むことこそが、グラフの解釈を狂わせる元凶となります。