ネット上の質問サイトやSNSを定点観測すると、「30代を過ぎてから右手のひらに突如として黒い点が浮き出てきた」「宝くじの高額当選の前兆なのか、それとも悪性の病気なのか眠れない」といった切実な投稿が後を絶たない。現場の占い師やカウンセラーの元にも、手のほくろをきっかけに運勢の鑑定を依頼する相談者が頻繁に訪れる。
実際に知恵袋等に寄せられた相談事例を精査すると、「手のひらにほくろができると大金持ちになれると聞いた」という情報の一人歩きが目立つ。中には金運アップを願って油性ペンで手のひらに黒い点を描き足す人まで散見されるが、これは手相学の本質を見誤った行為だ。
心理学的には、これは「バーナム効果」や「確証バイアス」の一種と言える。人間は自身の身体に予期せぬ変化が起きた際、そこに何らかの意味やストーリー性を見出そうとする無意識の防衛機制が働く。吉報を期待するあまり、明らかに形状が不規則な色素斑を「幸運の印」と思い込み、医療機関への受診を先延ばしにしてしまうケースは、現代の情報化社会における重大な落とし穴だ。
手相のプロが口を揃えるのは、「手のひらのほくろは運命の強制力ではなく、あくまで現状のエネルギー状態を映す温度計に過ぎない」という冷徹な事実である。