現地を訪れると、噂のような「全面的な特定国籍の排除」を公然と掲げる看板などは存在しない。だが、一部の宿坊が個人の予約受付を事実上制限したり、特定の仲介サイトでの販売を停止したりしているのは紛れもない事実だ。その引き金となったのが、深刻な異文化摩擦・マナー問題である。
「深夜になっても大声で談笑する声が障子越しに響き渡り、他の宿泊客からクレームが殺到した」「客室内で酒盛りをし、ふすまを破損された」「朝の勤行(ごんぎょう)の最中にフラッシュをたいて撮影を始めた」――。現地で取材に応じたある宿坊の僧侶は、ため息をつきながら過去のトラブルを明かす。言葉の壁によるコミュニケーション不足に加え、宗教施設に対するリスペクトの欠如が、現場を疲弊させていた。
特に問題視されたのが騒音問題だ。木造建築である宿坊は遮音性が極めて低い。静寂そのものが価値である聖地において、夜間の大声や廊下を走る足音は、他の参拝客の体験を根本から損ねてしまう。悪意のない「旅行気分の羽伸ばし」が、修行の場の秩序と衝突した結果であった。