「家出」が収録されているのは、1976年にリリースされたセカンド・アルバム『みんな去ってしまった』である。日本のフォークソングやニューミュージックが大きな転換期を迎えていた1970年代半ば、中島みゆきという才能が放った存在感は極めて異彩を放っていた。四畳半フォーク的な湿り気から一線を画し、かといって過剰に洗練されたポップスへも流されない。その絶妙なバランスが、このアルバム全体を支配している。
当時の音楽シーンでは、フォークソングからJ-POPの前身となるニューミュージックへの移行が急速に進んでいた。しかし、中島みゆきは流行のウェーブに流されることなく、個人の泥臭い情念と叙情性を研ぎ澄ませた。『みんな去ってしまった』という挑発的なタイトルが示す通り、置き去りにされた者の視点から描かれる人間模様は、現代のJ-POPシーンにおいても類例を見ない圧倒的な強度を持ち続けている。