飛ぶ鳥を落とす勢いだった環七本店が、2012年11月5日に25年の歴史へ静かに幕を下ろしたニュースは、飲食業界のみならず社会全体に大きな動揺を与えました。ネット上では「経営破綻したのではないか」「味が落ちて客が離れた」といった憶測が飛び交いましたが、実際のなんでんかんでん 閉店理由を紐解くと、時代の変化に伴う3つの構造的障壁が浮かび上がってきます。
第1の決定打となったのは、2006年の道路交通法改正に伴う「民間駐車監視員制度(いわゆる緑のおじさん)」の導入です。環七の深夜営業を支えていた最大の基盤は、ドライブがてら車で乗り付けるロードサイドの客層でした。取り締まりが民間に委託され、わずか数分の停車でも高額な反則金が科されるようになったことで、路上駐車に依存していた顧客が一気に激減しました。川原社長自身もメディア取材で「駐車違反の取り締まり強化によって、深夜の売上は全盛期の数分の一にまで落ち込んだ」と明言しています。
第2の要因は、住宅地化の進展に伴う近隣住民との環境摩擦です。店舗から立ち上る強烈な豚骨臭に対する苦情や、深夜の騒音、ポイ捨て問題が激化し、行政指導が度重なるようになりました。脱臭装置の導入など数百万円規模の対策を講じたものの、元々準住居地域であった周辺環境の変化に追いつくことが困難になっていきました。
第3の要因は、大手資本チェーンの台頭による「豚骨ラーメンのコモディティ化」です。「一風堂」や「一蘭」といった資本力を持つ企業が、豚骨特有の臭みを徹底的に抑えた洗練されたスープと、清潔で洗練された店舗オペレーションを武器に都心一等地に次々と進出しました。「わざわざ夜中に車を走らせ、煙と匂いにまみれて食べる」という非日常の体験価値が、駅前で手軽に食べられる日常食へとシフトしたことで、本店の優位性が薄れていったことは否めません。