そもそも「確信犯」とは、日常のちょっとした意悪さを指す言葉ではない。その発祥は19世紀末から20世紀初頭のドイツに遡る。独法学者のグスタフ・ラードブルフが定立した刑法学上の専門概念だ。彼が示した定義において、確信犯とは「自らの宗教的、政治的、あるいは道徳的な信念に従い、本人はそれが正義であると信じて疑わずに実行する犯罪」を意味していた。つまり、悪気どころか純粋な正義感から行われる行為なのだ。
この厳密な定義は日本にも輸入され、辞書編纂をはじめとする国語学の領域で長らく共有されてきた。例えば、老舗の出版社である岩波書店が発行する国語辞典などでも、本来の意味が第一義として掲げられてきた歴史がある。「自分は正しい」と確信しているがゆえに翻意させることが難しく、通常の犯罪者とは異なる病理を持つというのが、法学上の論点だった。