爪は根元にある「爪母(そうぼ)」と呼ばれる部分で細胞分裂が繰り返されることで日々作られています。手の場合で1日に約0.1mm、1か月で約3mmのペースで伸び続けますが、この形成プロセスは全身の健康状態と密接に連動しています。爪の表面に現れる色の変化や変形は、爪母の細胞異常、あるいは末梢毛細血管の循環障害が物理的な形状として現れた結果に他なりません。
例えば、爪の黒い縦筋は爪母に存在するメラノサイト(色素細胞)がメラニン色素を過剰に産生している証拠です。単なる加齢や良性の色素性母斑(ほくろ)である場合も多いものの、悪性黒色腫という致死性の高い皮膚悪性腫瘍の初期兆候であるケースが存在します。色素の幅が6mm以上に広がっている、根元の皮膚(爪郭)にまで黒ずみが染み出している(ハッチンソン徴候)といった特徴がある場合、一刻の猶予も許されません。
一方、爪の表面に現れる凹凸やボコボコとした質感は、爪母の機能が一時的に低下した際に発生します。爪の成長が数日間にわたって急激に滞ると横溝(ボー線条)が刻まれ、慢性的な末梢循環不全や加齢、乾燥が続くと縦ジワが深く刻まれます。白い斑点は爪甲に微小な空気が混入した点状爪甲白斑であることが大半ですが、爪全体の8割以上がすりガラスのように白く濁る場合は、低アルブミン血症を伴う重篤な内臓疾患が疑われます。