読者の多くが気になる「いつからあのワイルドな風貌になったのか?」という疑問。決定的な分岐点となったのは、2007年公開の映画『クローズZERO』(三池崇史監督)です。
本作で山田孝之が演じたのは、鈴蘭男子高校の頂点に君臨する「百獣の王」こと芹沢多摩雄。長めの襟足に無精髭、鋭い眼光で凄みを利かせ、圧倒的な喧嘩の強さと仲間への情愛を併せ持つ難役を見事に体現しました。映画界に走った衝撃は凄まじく、「あのセカチューの青年が、ここまで狂暴で魅力的な不良を演じるのか」と批評家・映画ファン双方を唸らせました。
なぜ、安定した人気が保証されていた「爽やか路線」を脱ぎ捨てたのか。その背景には、役者としての強い危機感と表現への渇望がありました。
当時、立て続けに重い感情を背負う純愛作品の主役を務めたことで、精神的な消耗が限界に近づいていたことも語られています。同時に、「爽やかな好青年」というパブリックイメージに縛られると、俳優としての寿命を縮めてしまうという冷徹な計算もありました。髭を生やし、泥臭く荒々しい肉体を露わにすることは、自らの殻を打ち破り、真の表現者として生き残るための必然的な自己変革だったのです。