古くから語り継がれる「寝る子は育つ」という言い伝えは、小児医学の観点から見ても完全に立証された科学的事実です。成長ホルモンの分泌は24時間均等に行われているわけではなく、1日の分泌量の大部分が睡眠中に集中しています。とりわけ入眠後およそ90分以内に訪れる深い眠り(徐波睡眠・ノンレム睡眠)において、1日の中で最大ピークとなる成長ホルモンが放出されます。
米国睡眠医学会(AASM)などの公的指針では、学童期(6〜12歳)の小学生に推奨される睡眠時間は9〜11時間とされています。しかし、2026年現在の日本における小学生の生活実態を調査すると、中学受験に向けた塾通いの激化や、スマートフォン・タブレットによる夜間のブルーライト照射によって、深刻な睡眠負債に陥っている児童が急増しています。深夜まで起きている状態が常態化すると、成長ホルモン分泌のピークが削られるだけでなく、交感神経の優位によって自律神経バランスが乱れ、骨の伸長に直接的な悪影響を及ぼします。
また、成長に伴う身体のシグナルとして頻繁に話題に上るのが「成長痛と身長の伸びるサイン」です。3歳から小学生低学年、あるいは高学年の成長期に、夕方から夜間、朝方にかけて「膝やふくらはぎ、足の付け根が痛い」と子どもが訴える現象は珍しくありません。この成長痛は、医学的には「骨が急激に伸びるから直接痛む」というよりは、活発な活動による筋肉や腱の過緊張、そして心理的な不安や疲労が重なって発現することが多いとされています。
一方で、年間8〜10cm以上も急激に背が伸びる「成長スパートの兆候」は、女子であれば10〜11歳頃、男子であれば12〜13歳頃から始まります。足のサイズが急に大きくなる、食欲が爆発的に増加する、皮下脂肪のつき方が変化するといった変化はスパート突入の有力なサインです。成長スパート期に入った瞬間から骨端線の閉鎖までのタイムリミットが急速に近づくため、小学生のうちから質の高い睡眠リズムを生活の骨格として確立しておくことが不可欠です。