フレグランスを語る上で欠かせないのが、「普通のムスク」と「ホワイトムスク」の根本的な違いです。名前は似ていますが、その成り立ちと香りのキャラクターは大きく異なります。
もともと古典的なムスクとは、ヒマラヤなどに生息するジャコウジカの雄の分泌腺(香嚢)から採取された天然香料でした。非常に野性的で重厚、アニマリック(動物的)な官能性を帯びた香りで、古代から媚薬や高級保留剤として重宝されてきた歴史があります。しかし、乱獲による絶滅の危機やワシントン条約による取引制限、さらに動物愛護への意識の高まりによって、現在では天然ムスクの使用は厳しく禁止されています。
これに対し、1970年代から80年代にかけて化学技術によって生み出された合成香料が「ホワイトムスク」です。1981年にザ・ボディショップ(THE BODY SHOP)がいち早くクルエルティフリー(動物実験を行わず、動物由来成分不使用)の香水として『ホワイトムスク』を発表したことで、世界中にその名が定着しました。動物臭や重々しい要素を極限まで削ぎ落とし、純白の清潔感を前面に押し出したことが、現代のホワイトムスクの原点となっています。