『サザン・ウインド』の歌詞は、南の島のリゾート地を舞台にした、見知らぬ男性との刹那的な恋の駆け引きを描いています。「あいまいな ままで 誘われて」「パノラマの島へ 行かないか」というフレーズに見られるように、誘う側と誘われる側のスリリングな距離感が巧みに表現されています。
当時のアイドルソングの多くは「一途な恋心」や「別れの悲嘆」を歌うものが主流でしたが、本作で描かれる主人公は、危険な香りのする誘いに乗るふりをしながらも、決して相手に主導権を渡しません。冷めた視線で相手を観察しつつ、南国の風に身を任せるという、どこかシニカルで自立した女性像が浮き彫りになります。
当時18歳の中森明菜は、語尾を跳ね上げるような独特のブレスと、中低音から伸びやかな高音へと駆け上がる声のグラデーションを使い分け、少女のあどけなさと大人のコケティッシュさを行き来する絶妙なボーカルを構築しました。歌詞に描かれた「気だるい南風」を声そのもので具現化した表現力は、当時の歌謡界でも突出していました。