計画的陳腐化の歴史は古く、100年以上前から国際的な規模で実践されてきました。代表的な計画的陳腐化の具体例を振り返ると、ハードウェアの制限からソフトウェアの制御へと手口が進化している実態が浮かび上がります。
歴史上最も悪名高い事例が、1924年に結成されたフェーバス・カルテルです。フィリップス、オスラム、ゼネラル・エレクトリック(GE)などの国際的な電球メーカーが結託し、当時2,500時間以上の寿命を持っていた白熱電球の寿命を意図的に1,000時間へと制限しました。基準を超えて長持ちする電球を製造した加盟企業には高額な罰金が科されるなど、寿命の短縮が厳格に管理されていた事実が当時の内部文書から明らかになっています。
デジタル時代に入り、この構造はさらに巧妙化しました。世界的な波紋を広げたのが計画的陳腐化とAppleを巡る騒動です。2017年、劣化したバッテリーを搭載した旧型スマホ(iPhone)において、予期せぬシャットダウンを防ぐという名目で、iOSのアップデートを通じてCPUの最大処理速度を密かに低下させていたことが発覚しました。
ユーザー側には動作低下の理由が開示されず、「端末の寿命が来た」と誤認して新型への買い替えを選択した消費者が続出しました。この問題に対し、フランスの競争・消費・不正抑止総局(DGCCRF)は2020年に2,500万ユーロ(約30億円)の制裁金を科し、アメリカでも集団訴訟に対して最大5億ドルの和解金を支払う事態へと発展しました。この事件は、ソフトウェアアップデートを通じた陳腐化の手法を白日の下に晒す象徴的な転換点となりました。