近年、子育て世代のコミュニティや知恵袋、SNSの育児アカウントでは、言葉の遅れに関する相談が毎日のように投稿されています。そこには、情報過多な現代ならではのリアルな苦悩が浮き彫りになっています。
大手子育てコミュニティの投稿を分析すると、「1歳半健診で単語が1つも出ず、周りの子が積み木を重ねて指差しテストをクリアしている姿を見て待合室で泣きそうになった」「同居の義父母から『話しかけが足りないのでは』と責められ孤立感を深めた」といった切実な声が目立ちます。特にSNS上で「1歳で二語文を話した天才児」のような極端なハイライト動画を目にすることで、過度な比較バイアスに囚われてしまう構図が常態化しています。
こうした状況について、都内で長年乳幼児健診に携わる小児科医および保健師らは次のように現場の実情を明かします。
「健診の現場で最も多い相談が言葉の遅れですが、1歳半の時点で単語が出ない子の約8割は、2歳から3歳にかけて一気に語彙が追いついていきます。健診で見るべきなのは『今何語話せるか』という点数の部分ではなく、親の呼びかけに振り向くか、大人の目をしっかり見てコミュニケーションを楽しもうとしているかという人間関係の土台です。そこさえ安定していれば、発語の時期の数か月程度のズレは将来的な言語能力の優劣に直結しません」
現場の専門職が口を揃えるのは、親が焦るあまり「これは何?言ってごらん」と子どもに発語テストを繰り返してしまう逆効果です。無理に喋らせようとするプレッシャーは、かえって子どものコミュニケーション意欲を減退させる要因となります。