長野県警察山岳遭難救助隊の記録によると、戸隠山山系における遭難事故の多くが岩場・鎖場での転落・滑落に集中しています。特に蟻の戸渡り周辺での滑落事故は、その地形的要因から死亡事故に直結する確率が極めて高いという残酷な現実があります。
報道関係資料や公表された事故事例を検証すると、事故発生の原因は単なる技量不足だけにとどまりません。「直立歩行への過信によるバランス崩壊」「強風に煽られたことによる体制の乱れ」「濡れた凝灰角礫岩でのスリップ」、そして最も深刻なのが「高度感によるパニックで足がすくみ、身動きが取れなくなった末の転落」です。
特に過去の事例では、単独行の登山者が下山予定時刻を過ぎても戻らず、翌日ヘリコプターによって谷底で発見されるケースが報告されています。目撃者がいない状況下での転落は、発見や救難活動の初動を大きく遅らせます。長野県の山岳遭難マップにおいても、戸隠山は「北アルプス上級ルートに匹敵する技術と装備を要する山」として一貫して最高峰の警戒が呼びかけられています。