2023年10月に導入されたインボイス制度は、領収書とレシートの関係性を法的に根本から再定義しました。現場の混乱を経て制度が定着した現在、企業の経費精算や個人事業主の確定申告ではどのような運用が標準となっているのでしょうか。
決定打となったのは、消費税法に定められた「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の規定です。以下の業種においては、通常の適格請求書で義務付けられている「交付を受ける事業者の氏名・名称(宛名)」の記載を省略した簡易インボイスの交付が正式に認められています。
- 小売業(スーパー、コンビニ、ドラッグストアなど)
- 飲食業(レストラン、カフェ、居酒屋など)
- 旅客運送業(タクシー、鉄道、バスなど)
- 旅行業および駐車場業
これらの業種で発行されるレシートには、事業者の登録番号(Tから始まる13桁の番号)、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額および適用税率がすべて網羅されています。つまり、コンビニや飲食店で受け取る感熱紙のレシートは、法律上1ミリの不足もない完全な仕入税額控除の証明書類なのです。
大手企業の経理部関係者へのヒアリングや現場アンケートでも、「手書き領収書を持参された場合、インボイス登録番号の転記ミスや税率区分の記載漏れがないかを1枚ずつ手作業でチェックしなければならず、経理業務のボトルネックになっている」という悲痛な声が上がっています。多くの企業が社内規程を改訂し、「3万円未満の飲食や小売購入については、手書き領収書ではなく商品明細付きレシートの提出を原則とする」という方針へ舵を切っているのが実情です。