結論から整理すると、「ご都合がよろしければ」という言い回しそのものは、文法上決して誤った敬語ではありません。「都合」に敬意を表す接頭辞「ご」を付け、形容詞「よい」の丁寧な表現である「よろしい」に仮定の接続助詞「ば」が接続した構造であり、相手の事情を立てる敬語表現として成り立っています。
それにもかかわらず、なぜ目上の相手に対して「失礼ではないか」と疑問視されるのでしょうか。その背景には、言葉の成り立ちではなく、相手に課してしまうコミュニケーションコストという実務上の落とし穴が存在します。
「ご都合がよろしければご参加ください」「ご都合がよろしければお越しください」とだけ伝えられた相手は、「行くべきなのか、断っても角が立たないのか」「いつなら空いているかを一から確認しなければならないのか」という心理的負荷を背負わされます。相手を気遣っているつもりの仮定形が、ビジネスの現場では「主体性のなさ」や「配慮を装った責任回避」と解釈されてしまうケースがあるのです。
特に社外の役員や多忙を極めるクライアントに対してアプローチする場合、「都合が良いか否か」の判断を白紙の状態で相手に委ねるアプローチは望ましくありません。相手の手間を最小限に抑える前提条件を添えて提案することが、真の意味でのビジネスマナーといえます。