ドラマタイアップ以外からも、時代を象徴するアンセムが次々と誕生しました。その筆頭が、年間ランキング3位に輝いたKANの『愛は勝つ』です。売上枚数は約198.9万枚に達し、あと一歩でダブルミリオンに迫るロングセラーとなりました。
KAN愛は勝つ大ブレイクの真相は、実はリリース当初からの一過性のブームではありませんでした。原曲は1990年7月に発売されたアルバム『野球選手が夢だった。』の収録曲で、同年9月にシングルカットされた際はチャート圏外でした。ブレイクの火種となったのは、フジテレビ系のバラエティ番組『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』の挿入歌への抜擢です。ビリー・ジョエルの『アップタウン・ガール』にインスパイアされた力強いピアノのリズムと、一切の衒い(てらい)を排除したストレートな応援メッセージが、バブル崩壊の予兆に不安を抱き始めていた日本人の心に深く突き刺さりました。
同じく時代の空気を鮮やかに切り取ったのが、年間4位に食い込んだ槇原敬之の『どんなときも。』です。どんなときも槇原敬之大ヒットの経緯を見ると、1990年にメジャーデビューしたばかりの無名の新人が、織田裕二主演の映画『就職戦線異状なし』の主題歌やケンタッキーフライドチキンのCMソングとして起用されたことで瞬く間に知名度を拡大。売上枚数は約167.0万枚を叩き出しました。
同曲がリスナーの心を捉えたのは、単なる精神論の励ましではなく、「自分らしくあることの難しさと尊さ」を等身大の言葉で紡いだ点にあります。高度経済成長からバブル景気の狂乱を経て、画一的な成功モデルに疑問を感じ始めていた若者たちにとって、槇原の繊細な心理描写は精神的なシェルターのような役割を果たしたのです。