産直市場や贈答用で手に入る桃の中には、指で触れてもビクともしない硬い個体が存在します。特に山形県や福島県などの主産地で愛好される「あかつき」や「川中島白桃」の収穫直後、あるいは「おどろき」のような硬肉種の場合、前述の湯むきを試みても皮は微動だにしません。ペクチンがまだ不溶性のままであり、熱ショックを与えても果皮が密着したままだからです。
こうした未熟な硬い桃の剥き方では、完熟桃とは全く異なるアプローチが必要です。まず果皮を剥く前に、桃の切り方と種の外し方を先行させることが破損を防ぐ秘訣となります。果実の割れ目(縫合線)に沿って包丁の刃を種に当たるまで深く入れ、ぐるりと360度一周切り込みを入れます。さらに直角に交差するようにもう一本切り込みを入れ、全体を4等分または8等分の格子状にします。
切れ目を入れた後、両手で桃の上下を優しく持ち、アボカドの種を外す要領で逆方向にひねりを加えます。果肉がしっかりしている硬い桃だからこそ、このひねりによって種から綺麗に果肉ブロックが外れます。種に残った果肉を取り外した段階で、初めて一切れごとに皮を引くか、切れ味の良いリンゴ用ピーラーで薄く削ぎ落とします。この手順を踏むことで、果汁を一切無駄にせず、均一な厚みを持った美しいカット桃が完成します。これが現場で最も推奨される硬い桃の皮の剥き方の実践形です。