ネット上の言論空間では、エネルギー問題を巡って極端な言説が飛び交いがちです。しかし、感情論に基づいた短絡的な解決策には、必ず見落とされがちな副作用が存在します。
誤解1:「太陽光や風力を増やせば、電気代はタダ同然になる」の罠
「自然の恵みである太陽光や風力は燃料費がゼロなのだから、再エネ比率を高めれば即座に電気代は安くなる」という主張が散見されます。しかし、これは発電設備を維持・統合するためのシステム全体コストを無視した誤解です。天候によって発電量が激変する再エネを大量導入すれば、送電網の増強費用や、余剰電力を蓄える大規模蓄電池の整備コストが莫大に膨らみます。
何より生活者が毎月支払っている「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」は、FIT制度発足当初の1kWhあたり数十銭から、近年では3〜4円台へと大幅に上昇しています。標準的な世帯では年間1万5,000円前後の賦課金を負担している計算になり、再エネ導入のコストはすでに電気代の一部として国民全体に広く転嫁されているのが実情です。
誤解2:「原発を全基動かせば、すべてのエネルギー問題は即座に解決する」の罠
一方で、「原発さえフル稼働させれば化石燃料の輸入は不要になり、昔のように安い電気が戻ってくる」という言説も現実を単純化しすぎています。原発再稼働 自給率への影響は確かに大きく、1基稼働するごとに年間数百億円規模のLNG輸入費用を削減し、自給率を約1%押し上げる効果があります。しかし、原発が賄えるのはあくまで電力分野(日本の最終エネルギー消費の約4分の1)に限られます。
輸送用ガソリンや化学製品の原料、製鉄・暖房に用いられる大量の熱エネルギーまで原発だけで代替することは物理的に不可能です。さらに、新規制基準への適合工事には1基あたり数千億円規模の投資が必要となっており、核燃料サイクルの確立や高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定という、数十兆円規模のバックエンド費用と社会的合意の課題は依然として先送りされたままです。