企業のマーケティング現場やSNS上では、知財知識の欠如に起因するトラブルが後を絶ちません。制作会社の現役ディレクターやフリーランスのイラストレーターへのヒアリング調査、知恵袋やコミュニティの告白事例を検証すると、共通する「油断のパターン」が見えてきます。
「社内会議用のプレゼン資料だから、画像検索で見つけた有名クリエイターのイラストを貼り付けて提出した。ところが、その資料がクライアントの公式サイトにPDF資料としてそのまま一般公開されてしまい、権利者から内容証明郵便が届いて数百万円の損害賠償を請求された」(30代・Web広告代理店制作進行担当者の証言)
このように、「非公開の社内利用のつもりだった」という認識の甘さが、ネット共有によって突如として公の侵害事案へと跳ね上がるケースが多発しています。著作権法第30条が認める「私的使用のための複製」は、家庭内やそれに準ずるごく限られた範囲に限定されており、一般企業の社内業務での無断複製は適用外となるのが実務上の通説です。
また、クリエイター間で激しい論争を巻き起こすのが「トレース」と「オマージュ(参考)」の境界線です。過去の最高裁判例(「江差追分事件」最高裁判決など)が示した創作性の判断基準では、原著作物の「表現上の本質的な特徴」を直接感得できるかどうかが侵害判定の分水嶺とされています。構図やポーズをそのままなぞり書きしたトレースイラストは、単なるアイデアの模倣ではなく「表現の盗用」と認定され、SNS炎上のみならず法的敗訴に直結します。