ネット上の運転指南や掲示板では、「とにかく左側が勝ち」という誤った言説が流布していますが、法律実務における優先順位の序列は極めて厳格です。左方優先は、あらゆる優先関係の中で「最下位の序列」に位置づけられています。
事故現場で左方優先が通用しなくなる決定的な例外パターンを整理します。
1. 優先道路の見分け方と法的力関係
交差する道路の一方が「優先道路」である場合、左方優先は一切排除されます。優先道路の見分け方は以下の2点です。
- 「優先道路」の道路標識が設置されている。
- 中央線(センターライン)や車両通行帯が、交差点の中まで途切れずに貫通して描かれている。
センターラインが交差点の手前で途切れている場合は、法的な優先道路ではありません。しかし、破線や実線が交差点をまたいで描かれている道路を走行している車両は、左右どちらから車が来ようとも法的に優先されます。
2. 広狭差のある交差点(道幅の明らかな違い)
一方の道路が「明らかに広い」場合、道交法第36条2項により広路優先となります。判例上、幅員に「一見してわかる程度の明らかな差(概ね1.5倍から2倍以上)」がある場合、狭い道路から進入する車両には一時停止に近い慎重な安全確認が求められます。狭路側が左方であっても、優先権を主張することはできません。
3. 一時停止と左方優先
道路交通法第43条で規定される「指定場所における一時停止」の規制標識がある交差点では、一時停止と左方優先が衝突した場合、100%一時停止規制が優越します。一時停止線がある側は、左右どちらからの進行であっても交差車両の進行を妨げてはなりません。
4. T字路の優先関係の落とし穴
住宅街で頻発するのがT字路の優先関係をめぐるトラブルです。突き当たり側の道路からT字路に合流しようとする車が「自分は相手の左側から交差点に入るから優先だ」と主張するケースが後を絶ちません。しかし、実務判例では、突き当たり側から右左折して進入する車両は、直進路を走行する車両の進行を妨げてはならないとする「直線路優先」の原則が事実上強く考慮されます。幅員が同一のT字路であっても、突き当たり路側は大きな注意義務を背負うことになります。
5. 直進車と右折車の優先(道交法第37条)
直進車と右折車の優先関係においては、道交法第37条の「交差点右折時の直進・左折車への進行妨害禁止」が適用されます。交差点で自分が直進しようとしている際、対向から左折してくる車や、交差道路から右折してくる車が「左方」に位置していたとしても、右折車は直進車の進行を妨害できません。