日本ハムファイターズに入団した2013年春、球団首脳陣と広報部門は大谷翔平という不世出の才能を保護するため、異例の取材ガイドラインを策定した。その中核に据えられていたのが、女子アナウンサーによる単独インタビューの原則禁止と、練習前後の囲み取材における厳格な時間管理である。当時、プロ野球選手と民放キー局の女性アナウンサーとの交際・結婚は定番のキャリアパスと見なされていたが、栗山英樹監督(当時)をはじめとする球団首脳は、グラウンド外のノイズが二刀流の育成を妨げるリスクを極限まで警戒していた。
この球団方針は、大谷自身の徹底した野球至上主義とも完全に合致していた。テレビ朝日系で放送された特番『徹子の部屋 大谷翔平SP』のアーカイブ映像において、当時22歳の大谷は黒柳徹子からの直球の質問に対し、「合コンに行ったこともなければ、女子アナの方と個別で食事に行ったことも一度もありません」と即座に明言している。当時出かけていた外食先は、お世話になった先輩選手やトレーナーとの栄養補給を目的とした場に限られており、華やかな夜の社交界とは無縁の生活を自らに課していた。
テレビ局各社は、視聴率獲得の切り札として宇賀なつみ、三田友梨佳、宮澤智、本田朋子といった人気キャスターを幾度となく球場やキャンプ地へ派遣した。しかし、現場で許されたのは球団広報が目を光らせる十数人の合同囲み取材のみであり、個別に名刺を渡したり私的な会話を交わしたりする隙は一切与えられなかった。取材現場のテレビクルーの間では当時、「大谷への個別アプローチは球団出禁のリスクを伴う」という暗黙の了解が定着していった。