伊藤蘭さんと水谷豊さんの家族像を語るうえで欠かせないのが、長女である趣里(しゅり)さんの存在です。NHK連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインをはじめ、数々の映画・ドラマで主演を張り、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、今や日本屈指の演技派女優として高い評価を確立しています。
芸能界の二世タレントをめぐっては、過保護な「ステージママ文化」や親の知名度への依存がしばしば問題視されます。しかし、水谷家のアプローチはまったく対照的でした。
趣里さんは幼少期からバレリーナを目指し、本場イギリスへ単身留学。度重なる怪我によってバレエの道を断念せざるを得なくなった際も、両親は安易に芸能界入りを勧めることはありませんでした。趣里さん自身が「親の名前を使わず、自分の力だけでオーディションを受ける」と決意した際も、両親はその意思を100%尊重し、あえて裏方に徹しました。
心理学でいう「心理的バウンダリー(適切な自立の境界線)」を保ち、親子の共依存関係を徹底して排除した教育方針。これこそが、趣里さんの圧倒的な自立心と実力を育て上げると同時に、家庭内の風通しを常に良好に保ち続けた決定的な要因です。