ネット上では、重大事故の一報が出るたびに「なぜ被害者の名前がすぐに発表されないのか」「警察が情報を隠蔽しているのではないか」といった無責任な憶測が飛び交う傾向があります。しかし、これは法治国家における刑事手続きおよび人権保護の仕組みを誤解したものです。
捜査当局が被害者の実名発表を慎重に行う最大の理由は、「最優先で肉親・近親者へ正確な訃報を届ける」という人道的責務にあります。家族がニュース速報のテロップで肉親の死を知るような残酷な事態を避けるため、公式な遺族への告知が完了するまでは報道各社に対しても広報発表が差し控えられます。また、同姓同名の別人と取り違えるリスクを完全にゼロにするための戸籍照会にも物理的な時間を要します。
さらに、事故現場における安全確保に関しても致命的な誤解が蔓延しています。「車内の方が鉄板で守られているから安全」と思い込み、追突事故を起こした車内にとどまり続けた結果、後続の大型トラックに押し潰される二次被害が後を絶ちません。高速道路上で停車を余儀なくされた場合、「ハザード点灯・発煙筒と三角停止板の設置・ガードレールの外側(防護柵外の安全地帯)への即座退避」が唯一絶対の鉄則です。