味覚と食感のプロファイルにおいても、両者は対照的な個性を持っています。調理科学的に見ると、筋肉繊維の密度や遊離アミノ酸の構成比、コラーゲン含有量に違いがあるためです。
スルメイカの身は肉厚で繊維がしっかりしており、噛みごたえのある力強い食感と濃厚な旨みが持ち味です。噛めば噛むほどアミノ酸由来の濃い味わいが口の中に広がります。また、スルメイカ最大の特徴は巨大で濃厚な肝(内臓・ゴロ)にあります。脂質とアミノ酸が凝縮された肝は、イカ料理のコクを劇的に深める調味料としても機能します。
一方、ヤリイカの最大の魅力は、きめ細かくしなやかな身質と上品な甘みです。筋肉の繊維が細かいため、加熱しても硬くなりにくく、歯切れの良い心地よい弾力を楽しめます。特に生食においては、舌の上でとろけるような滑らかな舌触りと、グリシンやベタインといった甘味系アミノ酸が際立つ上品な後味が絶大な支持を集めています。ただし、ヤリイカの肝は小さく水分が多いため、肝を使った濃厚な料理には向きません。