「なぜ、わずか2〜3週間の滞在で何十万個もの避妊具が必要なのか」——誰もが抱くこの疑問の答えは、単純な消費量だけでは説明がつかない。実のところ、配布されたすべてがその場で使われているわけではないのだ。
最大の理由は「啓発とお土産文化」にある。五輪の公式ロゴや特別デザインが施されたパッケージは、選手たちの間で格好の記念品(スーベニア)として扱われる。自国へ持ち帰り、チームメイトや友人に配ることで、結果的に世界各地へセーフセックスの重要性が伝播していく。選手村内のポリクリニック(診療所)や共用スペースに設置されたディスペンサーから、誰の目を気にすることもなく無料で自由に持ち出せる設計になっているのも、羞恥心を排除して利用を促すための厳格な安全管理ルールに基づいている。
もちろん、競技を終えたアスリートたちが解放感の中で親交を深める現実もある。厳しい食事制限と禁欲生活から解き放たれた若者たちにとって、選手村は数年に一度の巨大な社交場だ。万が一の健康リスクを未然に防ぐため、主催者側は「足りなくなる事態だけは絶対に避ける」という方針を一貫して崩さない。