そもそも「16文」とはどれほどの大きさなのか。単位を換算すれば約38.4センチ。しかし、馬場が実際に履いていたシューズのサイズはアメリカ規格の16号(約34センチ)だったとされる。ではなぜ、この数字が独り歩きしたのか。そこには当時のプロモーターによる巧みな演出と、メディアが作り上げた都市伝説的なレトリックが存在していた。
だが、数字の真偽など吹っ飛ぶほどの説得力が、実際の16文キックにはあった。身長209センチの巨躯から繰り出される足先は、相手の視界を覆い尽くす壁そのもの。ロープに振られた対戦相手が戻ってきた瞬間、逃げ場のない空間に巨大なキャンバスが立ちふさがる。格闘技としての威圧感とエンターテインメントとしての爽快感が完璧なバランスで同居した、唯一無二の技だったと言える。