制作に膨大な時間を要するもう一つの要因は、現在進行形である「暗黒大陸・王位継承戦編」の異常なまでの情報密度とプロットの複雑さにあります。
カキン帝国の14人の王子たちによる念能力を用いた後継者争い、それに介入する上位3大マフィア(シュウ=ウ一家、エイ=イ一家、シャ=ア一家)、王子警護を担うクラピカを中心としたプロハンター勢力、さらにヒソカの首を狙う幻影旅団(クモ)の面々が、巨大客船ブラックホエール1号という密室空間に集結しています。登場人物は主要キャラだけでも数十名に及び、それぞれの思惑、念能力の制約と誓約、情報戦がチェス盤のように交錯しています。
第401話以降では、クラピカが対峙する第1王子ベンジャミンの私設兵たちとの駆け引き、第4王子ツェリードニヒの圧倒的な念の開花、そしてヒソカと旅団の宿命の対決が本格化する局面に入っています。冨樫氏は単なるバトル描写にとどまらず、心理戦や法廷劇に近い緻密なロジックを1コマごとに構築しており、1話のネームを組み立てるだけで一般的な漫画の数倍におよぶ知的エネルギーを消費していることが推察されます。
SNSやファンコミュニティの反応を検証しても、「休載期間が長くても、掲載された1話の情報量が他の漫画の単行本半分に匹敵する」「設定の破綻がなく、伏線が完璧に回収されるため待つ価値がある」という肯定的な評価が支配的です。読者側も単純なスピード感より、作品としての純度と完成度を望んでいることが浮き彫りになっています。