生物学的な変化が存在しないにもかかわらず、なぜこれほど多くの人が「毛を剃ると濃くなる理由」を実感してしまうのでしょうか。その主たる要因は、「毛の断面」の露出と光学的なコントラストにあります。
本来、自然に生えて伸びた体毛は、先端に向かうにつれて細くなる「円錐状(ペン先のような形状)」をしています。さらに、毛先は日常の摩擦や紫外線にさらされることで、内部のメラニン色素がわずかに退色し、光を透過しやすい状態になっています。
ところが、カミソリなどで自己処理を行うと、毛の最も太い胴体部分がスパッと水平、あるいは斜めに切り落とされます。処理後に再び毛が皮膚の表面へ伸びてきたとき、最初に視界に入り、指先に触れるのは切断された円柱状の平らな断面です。
円錐形の先端と比べると、切り株のような断面は断面積そのものが格段に大きく見えます。加えて、皮膚から顔を出したばかりの毛根に近い部分は紫外線による退色を受けておらず、豊富なメラニン色素がぎっしりと詰まっています。この「太い面積」と「濃い色素」が白い肌の上に対比されることで、人間の脳は「以前よりも太く濃い毛が生えてきた」と錯覚してしまうのです。