SNSや筋トレコミュニティを観察すると、「肩が痛むけれどプレートを減らしたくない」「ロキソニンを飲んでベンチプレスを継続している」といった書き込みが日常的に見受けられます。しかし、現場で数多くの怪我人を見てきた指導者や医療関係者は、この重量への過度な執着(エゴリフティング)こそが重症化を招く元凶だと口を揃えます。
あるパワーリフティング経験者は専門誌の手記で、「『少し違和感があるが、大会前だから休めない』と無理に81cmラインのワイドグリップで挙げ続けた結果、ある練習日にボトムで関節内に激痛が走り、バーベルを胸の上に落とした。MRI検査の結果は棘上筋の不全断裂。腕を水平以上に上げられるようになるまで1年半を費やした」と痛烈な後悔を吐露しています。
痛み止め薬で感覚を麻痺させて行うトレーニングは、警報装置が鳴り響く火災現場で警報機の電源コードを切断して作業を続ける行為と何ら変わりません。痛覚は生体が発する物理的な限界シグナルです。痛みを感じた瞬間、その動作パターンはすでに生体力学的な許容範囲を逸脱しているという現実を冷静に受け止める必要があります。