東洋の伝説がカササギの群れを語る一方で、夜空の天文学的な現実を眺めると、そこにはより巨大で圧倒的な一羽の鳥が鎮座しています。夏の夜空の代名詞である「夏の大三角」を構成するはくちょう座です。
こと座のベガ(織姫星)、わし座のアルタイル(彦星)、そしてはくちょう座の首元に位置する1等星デネブ。この三位一体の配置を天体望遠鏡や星図で確認すると、鳥肌の立つような天文学的一致に気づかされます。天の川の両岸に分断されたベガとアルタイルの「ちょうど真ん中」を、十字の翼を広げた巨大な白鳥が、銀河の光の帯に沿って南へと滑空しているのです。
ギリシャ神話において、この白鳥はスパルタの王妃レダを誘惑するために姿を変えた最高神ゼウスとも、あるいは太陽神アポロンの馬車から転落してエリダヌス川で溺死した親友パエトーンを救おうと幾度も水に潜り、神によって鳥の姿に変えられたキグナス(キュクノス)の化身とも語られます。水辺と関わりの深い白鳥の姿が、星の川を泳ぐように配されている点は西洋のイマジネーションの妙です。
ここで興味深いのは、東西の視線の交差です。中国の神話作家たちは、天の川の真ん中に漂う星の濃密な塊(天の川の最も明るい部分の一つ)を見て「カササギの群れが翼を重ね合わせた橋」と解釈し、古代地中海の天文学者たちは「水面を低空飛行する白鳥」を見出しました。観測する文化や文脈こそ違えど、人類は天の川の裂け目に「隔たりを飛び越える翼を持つ生き物」の姿を必然的に投影していたことが分かります。