医学の世界において、夢精は正式に「夜間遺精(Nocturnal Emission)」と定義されています。その根本的な発生理由は、精巣(睾丸)や精のう、前立腺で絶え間なく作られ続ける精液が許容量を超えた際に、古い精液を自動的に体外へ排出する「生体のオーバーフロー弁(安全弁)」が作動するためです。
精子は精巣で毎日数千万〜数億個単位で生成され、前立腺液や精のう液と混ざり合って精液プールを形成します。射精を行わない期間が続くと精液が貯蔵限界に達し、身体は中枢神経を介して自動排出プログラムを起動します。これが睡眠中に無意識の射精として現れる基本的な仕組みです。
この現象と密接に連動しているのが、睡眠サイクルのうち浅い眠りにあたる「レム睡眠」と自律神経の働きです。人間はレム睡眠中、副交感神経が優位になり、男性ホルモン(テストステロン)の分泌リズムとともに「夜間陰茎勃起現象(NPB / Nocturnal Penile Tumescence)」を起こします。一晩に3回から5回程度、意識とは無関係に勃起を繰り返す生理現象です。
この勃起状態に加えて、精液の充満による内圧の上昇、寝返りや寝具による物理的摩擦、さらには大脳皮質のリラックス状態が重なることで、脊髄の射精中枢が刺激され、射精反射が引き起こされます。「エッチな夢を見たから射精した」と解釈されがちですが、実際には「身体側で勃起と精液の充満が先に起き、その刺激を処理するために脳が後付けで性的な夢を想起した」というケースが睡眠医学の現場では多数報告されています。