数字の激変は、日々の営業現場や観光地にどのような影を落としているのか。東京都内および関西の商業施設を取材すると、切実な証言が次々と浮き彫りになります。
都内大手百貨店の免税担当者は、疲れた表情でこう打ち明けます。
「2026年頃までは、開店と同時に中国のお客様が1階の化粧品コーナーへ殺到し、限定セットを何十個もまとめ買いされていました。しかし現在は免税カウンターの待機列自体がほぼ消滅しています。いらっしゃる中国のお客様も、富裕層の方が数名でじっくり選ばれる程度。客単価の落ち込みは現場の売り上げにダイレクトに響いており、販売戦略の根本的な見直しを余儀なくされています」(都内百貨店・インバウンド推進担当)
一方で、宿泊業界からは全く異なるトーンの声も聞こえます。京都の町家旅館を運営する支配人の証言です。
「中国の団体ツアー客はゼロになりましたが、予約表は数ヶ月先まで満室です。お客様の内訳が大きく変わり、アメリカ、オーストラリア、北欧からの個人旅行者が長期滞在されています。彼らは買い物をほとんどしない代わりに、伝統文化の体験やプライベートガイド、地域の高級割烹での食事に惜しみなくお金を使われます。結果として、客単価はむしろ過去最高を更新しています」(京都市内・宿泊施設支配人)
ネット上の世論やSNS、掲示板でも、中国人観光客の減少をめぐって意見が真っ二つに分かれています。
- 歓迎・安堵の声(生活者・一般旅行者):「新幹線や地下鉄の車内が静かになり、落ち着いて移動できるようになった」「観光地での無理な割り込みやマナー違反トラブルが明らかに減った」「ようやく地元の京都らしい風情が戻ってきた」
- 危機感・懸念の声(事業者・地方観光関係者):「中国人団体客向けにバスやホテルを増設した地方企業は倒産寸前」「ドラッグストアの免税フロアがガラガラで、日本人アルバイトのシフトが削られている」「欧米人は地方の温泉街まで足を伸ばしてくれない。東京と京都だけが潤っても地方経済は持たない」
このように、街の快適性を喜ぶ市民目線と、巨額の消費マネー喪失に直面する事業者目線との間には、依然として深い溝が横たわっています。