日本の住宅で最も普及している「6畳間」および本間格の「8畳間」においては、出入り口や床の間の位置関係に連動した明確な配置基準が存在します。特に絶対に避けなければならない最大のタブーが、床の間に対して畳の縁が直角に突き刺さる「床刺し(とこざし)」と呼ばれる配置です。
床の間は、掛け軸や花を飾り、神仏や家長を迎えるための格式高い聖域です。この床の間正面の板壁や床框(とこがまち)に向かって、畳の長手方向の縁が矢のように突き刺さる線を描くことは、刀を突きつける無礼な行為と見なされ、古来より家運を損なう凶相とされてきました。床の間の前には、必ず畳の長辺が平行に接する「床前畳(とこまえだたみ)」を配置するのが不動の鉄則です。
6畳の標準的な祝儀敷きレイアウトでは、床前畳を横向きに据え、その周囲に縦2枚、横1枚、縦1枚といった具合に巴状に組んでいきます。この際、部屋の入り口(襖や障子)の正面に畳の目打ちが平行になるよう配慮すると、歩行時に畳の目が傷みにくく、耐久年数を延ばす効果も得られます。8畳間の場合は、中央に2枚の畳を平行に並べ、その周囲を6枚の畳で囲む「環状の祝儀敷き」が伝統的な黄金律とされています。中央部で十文字を作らず、四隅を美しく流すこの配置は、室内に落ち着きと広がりをもたらします。
さらに風水や家相の方角理論においても、畳の配置は重視されます。東や南東から昇る朝日の光が畳の目に沿って美しく反射するよう長手を計画することで、室内全体の「気」が活性化すると言われています。逆に、掃き出し窓からの採光と畳の向きが直交して強い影が落ちるレイアウトは、空間の広がりを狭めて見せる原因となるため、意匠設計の観点からも事前のシミュレーションが欠かせません。