ポケモンの歴史上、最も視聴者に強烈なインパクトを残した影当てクイズといえば、アニメ第1期(無印編)第56話「ポケモンけんていしけん!?」で出題された問題に他なりません。バッジを持たずともポケモンリーグへの出場資格を得られるという名門試験に挑戦したサトシたちの前に立ちはだかったのは、完全な「ただの黒い正円」でした。
モニターに映し出された真ん丸の影を見て、会場の受験生たちやサトシは即座に「ビリリダマ」「マルマイン」「タマタマ」と回答します。球体のポケモンを連想するのは至極自然な思考回路でした。しかし、試験官から非情にも言い渡された正解は「上から見たプリン」という、常人の発想を完全に打ち砕く回答でした。
なぜこのような問題が作られたのか、当時のアニメ制作現場の文脈を辿ると、初期アニポケのシリーズ構成を手掛けた故・首藤剛志氏が込めた鋭利なアイロニーが浮かび上がります。首藤氏は著書やコラム等で、現実社会に蔓延する重箱の隅をつつくようなペーパーテストや、マニュアル主義に凝り固まった官僚的な試験制度への風刺をたびたび語っていました。「知識の詰め込みだけで現場の臨機応変さを測れるのか」という強烈なアンチテーゼが、あの円形シルエットという理不尽クイズの理由として結晶化したのです。初見殺しのギャグシーンでありながら、大人社会への批評精神が宿った名場面でした。