制御性T細胞の謎を解く!ノーベル賞候補の発見とがん治療の真相

制御性T細胞の謎を解く!ノーベル賞候補の発見とがん治療の真相

制御性T細胞の謎を解く!ノーベル賞候補の発見とがん治療の真相に関する最新のニュースをまとめてご紹介します。関心のある方は必見です。

本来は身体を守るはずの制御性T細胞が、なぜがん患者の体内では悪魔の味方として振る舞ってしまうのでしょうか。ここに、がん細胞が何千万年もの進化の過程で獲得した極めて狡猾な生存戦略が存在します。制御性T細胞 がん免疫逃避の理由を解き明かす鍵は、腫瘍微小環境(TME)と呼ばれるがん組織周囲の特殊な生態系にあります。

がん細胞は無秩序に増殖する過程で、ケモカインと呼ばれる化学物質(CCL22など)を放出し、血中を巡る制御性T細胞を呼び寄せます。集まった制御性T細胞は、がん組織の周囲に幾重もの防御壁を形成します。そこに異物であるがんを殺傷しようとキラーT細胞が駆けつけても、制御性T細胞が強力な抑制性サイトカイン(TGF-βやIL-10)を放出し、さらにキラーT細胞の増殖に必要なIL-2を吸い尽くして餓死に追い込んでしまうのです。これにより、免疫系は「がん細胞を自己の正常組織である」と誤認させられ、攻撃の手を完全に止められます。

この厚い壁を打ち破る挑戦こそが、制御性T細胞 がん免疫療法の真相です。本庶佑・京都大学特別教授らのノーベル賞受賞で知られるPD-1阻害薬などの制御性T細胞 免疫チェックポイント阻害薬は、疲弊したキラーT細胞のブレーキを解除する画期的な薬効を示しました。しかし、臨床現場では患者全体の20〜30%程度にしか著効しないという高い壁に直面します。その最大の障壁こそが、がん組織内に居座り続ける制御性T細胞でした。いくらキラーT細胞を奮い立たせても、現場で制御性T細胞が強力なブレーキをかけ続けていれば効果は相殺されてしまいます。そのため現在の腫瘍学では、腫瘍内の制御性T細胞をいかに安全に取り除くかが治療成功の決定打と位置づけられています。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。