『渡る世間は鬼ばかり』の歴史を語る上で、岡倉家の父・大吉と母・節子の存在を抜きに語ることはできません。物語の根幹であった両親の退場と訃報には、多くの視聴者が衝撃を受けました。
岡倉節子役・山岡久乃さんの降板理由と急逝の真実
第1シリーズから第3シリーズ(1996〜1997年)まで岡倉家の精神的支柱であった母・節子を演じた山岡久乃さんは、第4シリーズ(1998年開始)の初回冒頭、「ニューヨーク旅行中に心筋梗塞で急死」という突然のナレーションのみで劇中から姿を消しました。このあまりに不自然な幕引きから、当時は「橋田壽賀子さんとの確執による降板劇ではないか」といった根拠のない噂が一部週刊誌で過熱しました。
しかし、報道各社の取材データおよび関係者の公式証言によると、真相は重度の胆管がんとの過酷な闘病でした。山岡さんは自らの病状を共演者にも伏せ、迷惑をかけまいと気丈に降板を申し出ていたのです。1998年秋に胆管がんの手術を受け、懸命な治療を続けたものの、1999年2月15日に72歳で逝去。橋田壽賀子さんは当時の特番インタビューで「節子が生きていれば描きたい話が山ほどあった。あんなに素晴らしい女優さんを失ったことは無念でならない」と涙ながらに語り、不仲説を真っ向から否定しています。
初代・岡倉大吉役の藤岡琢也さんの死因と引き継ぎの舞台裏
料理人として「おかくら」を切り盛りし、娘たちの悩みを受け止める温厚な父親を演じ続けた初代・大吉役の藤岡琢也さん。藤岡さんは第7シリーズ(2004〜2005年)まで出演を続けましたが、2006年の第8シリーズ制作発表直前、肺炎のため緊急入院を余儀なくされました。
現場復帰を目指して療養を続けていたものの病状は好転せず、同年10月20日、慢性腎不全のため76歳で逝去。大吉役を引き継いだのは、藤岡さんの盟友でもあった宇津井健さんでした。石井ふく子プロデューサーの手記によると、藤岡さんは病床から「宇津井ちゃんなら安心して大吉を任せられる」とメッセージを託したとされています。宇津井さんは「藤岡さんの魂を汚さないよう、自分なりの父親を演じきる」と宣言し、2代目大吉として最終シリーズおよび特番まで見事に演じ抜きました。
2代目大吉・宇津井健さんの矜持と最期
2代目大吉として晩年の岡倉家を支え、2013年の2時間スペシャルまで出演した宇津井健さんもまた、2014年3月14日に慢性呼吸不全のため82歳で逝去しました。亡くなる直前までダンディで凛とした姿勢を崩さず、亡くなる当日に長年連れ添った内縁の女性と入籍を済ませていたエピソードは、公私ともに責任感を貫いた宇津井さんの生き様として日本中に深い感銘を与えました。