高校を卒業した2017年4月、田村保乃はバレー推薦によって大学へ進学しました。午前中は講義を受け、午後は乳幼児心理学の課題や教育実習に向けたピアノの練習、そして放課後は激しい部活動と、絵に描いたような多忙な学生生活を送っていました。当時の彼女の青写真は、間違いなく「大学を卒業してバレーボールに区切りをつけ、子どもたちに囲まれて働く保育士になること」でした。
その平穏な人生設計を一変させたのが、2018年夏に開催された坂道合同新規メンバー募集オーディションでした。もともと乃木坂46や欅坂46(当時)の大ファンであった彼女は、大学2年生というタイミングで「これが私の人生で最初で最後のチャンス。もし落ちたら、未練を一切断ち切って保育士の勉強に専念する」という固い決意を胸に応募ボタンを押したといいます。
結果は、応募総数12万9,182人の中から選ばれるという、倍率約3,200倍の超難関を突破しての合格でした。しかし、それは同時に「これまでの人生の全てだったバレーボールを辞めること」「苦労して進学した大学を辞退すること」を意味していました。東京を拠点として本格稼働するにあたり、大阪の大学に通いながらグループ活動を両立することは物理的に不可能だったため、田村は大学2年の秋に中退を決断し、荷物をまとめて単身東京へと旅立ちました。