競馬界で「大魔神の馬はなぜ走るのか」が議論される際、必ず中心に挙がるのが偉大なる繁殖牝馬ハルーワスウィートの存在です。生まれつき尾のないハンデを背負いながらもノーザンファームで繁殖生活を送った同馬と佐々木オーナーの出会いは、日本競馬の血統史を塗り替える転換点となりました。
日本最大の競走馬市場であるセレクトセールにおいて、佐々木氏はハルーワスウィートの産駒たちを次々と落札。当時の取材や特集番組で佐々木氏自身が明かしたところによると、馬体を見る際には「背中のしなり」「トモ(後肢)の筋肉の付き方」「歩様の柔らかさ」といったアスリート特有の骨格バランスを直感的に重視していたといいます。
超高額馬を何十頭も買い漁る大手法人馬主とは対照的に、佐々木氏は1年あたりの購買頭数を絞り込み、惚れ込んだ血統にピンポイントで投資する手法を徹底。その結果、ハルーワスウィートの仔であるヴィルシーナ(牝)、シュヴァルグラン(牡)、ヴィブロス(牝)の同一母3兄妹が全員G1タイトルを獲得するという、世界的に見ても極めて稀な奇跡を実現させたのです。
加えて、栗東の友道康夫調教師との強固な信頼関係も見逃せません。馬の成長曲線に合わせた無理のないローテーションを組み、心身の成長を待てる我慢強さは、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた大投手ならではの器の大きさと言えます。