事件の結末で明かされる最も衝撃的な真相は、「母親の政恵は認知症など患っていなかった」という事実です。
長年にわたり嫁の八重子から冷遇され、実の息子である昭夫からも疎まれていた政恵は、家庭内での居場所を完全に失っていました。孤立と絶望の中で、これ以上嫁姑問題で揉めないため、そして息子の負担を減らすために、あえて認知症のフリを続けていたのです。
昭夫は、自分を育ててくれた母が正気であることを知りながら、自らの保身と息子のために母を警察へ突き出そうとしました。加賀恭一郎は、取り調べの場で昭夫の卑劣なエゴを静かに、しかし情け容赦なく暴き立てます。「この家には見えない結界がある」と語る加賀の言葉通り、前原家はとっくに家族としての機能を失っていました。
加賀から母の真情を聞かされた昭夫は、自らの浅ましさに打ちのめされ、号泣しながらすべてを自供。直巳も逮捕され、前原家の偽りの平穏は完全に崩壊しました。