『飛燕』を語る上で欠かせないのが、米津玄師自身が公言している『風の谷のナウシカ』からの影響です。当時の制作秘話インタビューにおいて、彼は子どもの頃から繰り返し読み込んできた宮崎駿監督の漫画版『風の谷のナウシカ』の世界観を念頭に置きながら、この曲のメロディと詞を紡ぎ出していったことを明かしています。
映画版のさらに先を描いた全7巻の漫画版ナウシカは、生命の業や過酷な環境の中で生き抜く人間たちの葛藤を容赦なく描いた重厚な叙事詩です。米津玄師はナウシカという少女が背負った過酷な運命、そして絶望の中でも決して歩みを止めない姿勢に深く共鳴し、それを現代のポップミュージックへと見事に昇華させました。
単なるファンアート的な引用にとどまらず、偉大な作家の精神性を己の血肉として受け止め、独自の音楽言語で再構築した点に、アーティスト・米津玄師の類まれな作家性が光っています。