風情ある石畳の階段を前にした際、耳にすることの多い「産寧坂で転ぶと三年以内に死ぬ(あるいは寿命が3年縮む)」という噂。思わず足を止めてしまうほどのインパクトを持つこの言葉ですが、結論から言えば呪いや怪異の類ではなく、先人たちが遺した極めて現実的な安全警告です。
産寧坂は46段からなる急な石段で構成されており、清水寺へ向かう参拝客や観光客で常に賑わっています。かつての人々は下駄や草履を履いて往来しており、雨や雪の日には石畳が滑りやすく、転倒して大怪我を負うリスクが日常的にありました。石段から転がり落ちれば、命に関わる重傷を負いかねません。「ここで転んではいけない」という強い危機意識を持たせるため、あえて強烈な言い回しで注意を促したのが真相とされています。
万が一転んでしまった場合のお祓い・厄除けとして、坂の途中にあるお店で「瓢箪(ひょうたん)」を買い求める風習が根付いたのも、庶民の心理的な救済措置として広まった文化のひとつです。瓢箪は古来より「倒れても起き上がる」「無病(六瓢)息災」の縁起物とされており、不吉な言い伝えをユーモアと祈りで中和する京都らしい知恵が息づいています。