2023年元日、徳川宗家においておよそ60年ぶりとなる歴史的な慶事が執り行われました。長年にわたり第18代当主を務めた徳川恒孝(つねなり)氏(元日本郵船副社長)が名誉当主へと退き、長男の徳川宗家 19代当主 徳川家広氏が家督を正式に継承したのです。同年秋には、徳川家の菩提寺である東京・芝の増上寺や日光東照宮において盛大な継承式と記念法要が営まれ、メディアでも大々的に報じられました。
1965年生まれの家広氏は、慶應義塾大学を卒業後、米国ミシガン大学大学院、コロンビア大学大学院で国際政治・経済を修めた気鋭のインテリジェンスです。帰国後は翻訳家としてジョージ・ソロスなどの世界的名著を翻訳し、自身も国際情勢や国内経済に関する鋭い評論を数多く発表してきました。
公式会見や自著・手記の中で家広氏は、名門の看板を背負うことへの覚悟について率直な言葉を残しています。
「徳川という看板は、個人の所有物ではなく、日本の歴史文化そのものをお預かりしているという感覚に近い。現代の宗家の役割は、過去の栄光を誇ることではなく、残された貴重な文化財を適切に保護し、未来の世代へ継承していくことにある」
この言葉通り、家広氏は公益財団法人徳川記念財団の理事長として、宗家に伝来する国宝・重要文化財の散逸を防ぎ、学術研究や一般公開を力強く推進しています。伝統の重圧を軽やかに受け流しつつ、グローバルな知見を地域振興や文化保全に還元する姿は、まさに令和における新しい当主像の体現と言えるでしょう。
また、徳川慶喜 子孫 現在の動向にも触れておく必要があります。幕末の最後の将軍・慶喜が明治政府から公爵を授けられて興した「徳川慶喜家」は、4代当主の徳川慶朝(よしとも)氏が2017年に67歳で逝去されました。慶朝氏はプロカメラマンとして活躍する傍ら、慶喜が愛飲したとされるコーヒーを現代に再現した「徳川将軍珈琲」の監修などでも親しまれた人物です。直系の男子後継者が不在となった後も、その血脈と歴史的記憶は親族や財団の手によって大切に守り続けられています。