憲法第4条が規定する「国事に関する行為(国事行為)」とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。その範囲は憲法第6条および第7条に限定列挙されており、これ以外の行為を国事行為として勝手に追加することは許されません。
憲法第6条で規定されているのは、国家機関のトップを形式的に就任させる任命権です。国会の指名に基づく内閣総理大臣の任命権、および内閣の指名に基づく最高裁判所長官の任命権の2つがこれに該当します。ここでよくネット上の質問箱や知恵袋などで議論になるのが、「もし天皇が特定の首相就任を嫌がった場合、天皇の拒否権の有無はどうなっているのか」という論点です。
法制的な結論は明快です。天皇に拒否権は一切ありません。国会が指名した人物に対して天皇が任命を拒否することは憲法上許されず、仮に拒否すれば明白な憲法違反となります。天皇の任命行為は、国会の指名という確定した事実を儀礼的に認証する「純粋に機械的・形式的な手続き」にすぎません。
憲法第7条に定められた主な国事行為一覧は以下の通りです。
- 憲法改正、法律、政令及び条約の公布:成立した法令に署名・押印して国民に周知させる行為。内容への賛否を表明する余地はありません。
- 国会の召集、衆議院の解散、総選挙の施行の公示:内閣の決定に従い、公的な手続きを進めます。
- 国務大臣その他の官吏の任免等の認証:内閣が決定した人事を公に証明します。
- 栄典の授与:叙勲や褒章の授与式で受章者に勲章を親授します。
- 外国の大使及び公使の接受:日本に着任した外国特命全権大使から信任状を受け取ります。
宮内庁の公表資料によると、天皇は年間約1,000件近くに及ぶ閣議決定書類に目を通し、署名や押印(御名御璽・ぎょめいぎょじ)を行っています。過密なスケジュールの中で膨大な公文書を裁可し続ける姿は、一切の自己主張を封印した国家への奉仕作業そのものです。