草加店の閉店を語る上で見落としてはならないのが、草加市周辺における「ディスカウントスーパー勢力図の構造変化」です。草加市は東京都心に隣接するベッドタウンであり、主要幹線道路が縦横に走るため、小売業にとっては関東屈指の激戦区として知られています。
2010年代以降、市内外には「業務スーパー」の複数出店をはじめ、圧倒的な精肉売場と惣菜で勢力を急拡大した「ロピア」、ディスカウントドラッグストア大手の「コスモス薬品」や「ウエルシア」、さらには大型商業施設内のディスカウント業態が次々と包囲網を敷きました。かつてはゑびすや商店のような独立系ディスカウントセンターの独壇場だった「圧倒的な低価格」という領野に、上場大手のナショナルチェーンがスケールメリットを武器に参入してきたのです。
ここで生じた一般的な誤解が、「大手競合に客を奪われて売上が激減したから潰れた」という見方です。しかし、流通の専門的見地から分析すると、実態は少し異なります。
ゑびすや商店の最大の強みは、メーカーの生産過剰品やパッケージ変更品、季節限定の余剰在庫などを「現金一括・即日引き取り」で安く買い取るスポット仕入れ力にあります。この仕入れモデルは、決まった商品を常に同じ価格で並べ続ける大手チェーンのシステムとは根本的に競合しません。むしろ、顧客は「定番の調味料や生鮮は大手スーパーで買い、菓子や飲料、掘り出し物はABSでまとめ買いする」という使い分けをしていました。
したがって、草加店の閉店は競合敗退ではなく、「スポット仕入れの在庫を捌くための受け皿を、駐車収容力が高く大型トラックの搬入がスムーズな足立店や三郷店へ集約させた」というのが流通構造上の真実です。