化粧まわしを取り巻く情報の中には、インターネット上で事実と異なる憶測が独り歩きしている例が散見されます。ここでは、一般にはあまり知られていない3つの盲点と誤解を是正します。
誤解1:使わなくなった化粧まわしは力士が売却して換金できる?
「引退後や着用しなくなった化粧まわしを売れば大金になるのではないか」と考える人がいますが、これは完全に相撲界の掟に反する誤解です。化粧まわしは後援者から力士へ託された信頼の象徴であり、魂そのもの。どれほど生活に困窮したとしても、市場やオークションに流すことは最大のタブーとされています。引退後は部屋の後援会や出身地の記念館に寄贈・展示されるか、実家で家宝として厳重に保管されるのが通例です。
誤解2:高額な化粧まわしの贈呈には巨額の贈与税が力士にかかる?
数百万円から数千万円相当の物品を無償で受け取るとなれば、税制上の「贈与税」が懸念されます。しかし税法上、業務に必要な制服や用具の貸与・寄贈、社会通念上相当と認められる昇進祝いや表彰の記念品については、力士個人の課税対象所得とはみなされないケースが一般的です。また、企業スポンサーが贈呈する場合は、土俵入りによる宣伝効果や広報実績を根拠として「広告宣伝費」や「協賛金」として損金処理される法務・税務スキームが整えられています。
誤解3:力士1人が持つ化粧まわしは昇進時の1本だけ?
十両昇進時に作られた1本を引退まで使い続ける力士もいますが、幕内で活躍する人気力士になると、出身後援会、学生時代の母校、複数のスポンサー企業などから次々と贈呈され、1人で10本〜20本以上を所有することも珍しくありません。場所ごと、あるいは東京場所や地方場所ごとに着用する化粧まわしをローテーションさせ、支援者への感謝を行動で示しています。その反面、相撲部屋にとっては「明荷(あけに)」と呼ばれる専用の桐箱に保管し、湿気や虫食いを防ぐ徹底したメンテナンス管理が大きな負担となる側面もあります。