日本国内でワイエスを語る上で絶対に欠かせない存在が、埼玉県朝霞市に拠点を置く丸沼芸術の森 ワイエス コレクションです。若手芸術家の育成支援を行う実業家・須崎勝茂氏の情熱によって収集されたこのコレクションは、完成作のみならず、膨大な素描、水彩、ドライブラシなどの習作群を含んでおり、世界的な研究者からも高く評価されています。
ワイエスは1枚のテンペラ画を仕上げる前に、対象を何十枚、何百枚とスケッチし、構造を徹底的に解体・再構築しました。丸沼芸術の森のコレクションの真価は、彼が「どの線を選び取り、どのディテールをあえて削ぎ落としたのか」という引き算の美学を目の当たりにできる点にあります。水彩の瑞々しい筆致から、ドライブラシによる緻密な陰影、そして最終的なテンペラの堅牢な構築へと至るプロセスは、まるで画家の思考の現場に立ち会っているかのような興奮を与えてくれます。