櫻井和寿のソングライティングの根底には、ミスチル櫻井和寿の経歴と若い頃の泥臭い体験が息づいています。関東第一高校時代に結成した前身バンド「THE WALLS」から、1989年のMr.Children結成、そして1992年のメジャーデビューに至るまで、決して平坦な道のりではありませんでした。ライブハウスの動員に苦しみ、渋谷の居酒屋でメンバーと朝まで語り明かした下積み時代が、彼の音楽の土台となっています。
櫻井和寿の作詞作曲における名曲裏話を紐解くと、人々の心を揺さぶる名フレーズの多くが、極度の孤独や移動の合間に生まれていることがわかります。約276万枚を売り上げたメガヒット「Tomorrow never knows」は、過密スケジュールの合間を縫って訪れたニューヨークのセントラルパークを一人でジョギングしている最中に、メロディと歌詞の原型が突如降りてきたと語られています。また、大ヒット曲「名もなき詩」に登場する有名な早口のフレーズは、プライベートの激しい葛藤と世間からの重圧の中で、吐き出さざるを得なかった魂の叫びそのものでした。
若き日の激情とエゴを乗り越え、50代後半となった現在は「誰かの背中をそっと押す光」のような楽曲を紡ぎ続けています。自らの弱さや過ちを否定せず、すべてを抱きしめて音楽へと昇華させる姿勢こそが、Mr.Childrenが30年以上にわたって世代を問わず愛され続ける最大の理由です。