医療従事者向けSNSやナースステーションの現場カンファレンスでは、ネーザルハイフロー導入後の患者管理について、リアルな困りごとや反省が多数共有されています。
「マスク型と違って顔が覆われないから安心していたら、2日目に鼻孔の入口が赤くえぐれて出血していた」「口呼吸が激しい患者さんで、口腔内がカラカラに干からびて分厚い痂皮(かひ)が舌一面にこびりついてしまった」という声は極めて一般的です。鼻カニュラという小型デバイスゆえに軽視されがちな、皮膚・粘膜の器質的トラブルの実態が浮かび上がります。
鼻腔粘膜トラブルと圧迫創傷(MDRPU)の防ぎ方
専用の太い鼻カニュラ(プロング)は、鼻腔の内径に対して50%程度(最大でも半分)の太さを選択するのが鉄則です。鼻孔を完全に塞いでしまうと、呼気時の抵抗が極端に増大して呼気努力を強いるだけでなく、鼻前庭の粘膜を圧迫して短時間で虚血性潰瘍を引き起こします。
また、ヘッドストラップの締めすぎも厳禁です。カニュラの重みでプロングが鼻中隔や鼻孔上縁を押し上げないよう、回路ホルダーを衣服や枕元に適切に固定してテンションを逃がす処置が求められます。頬骨部や耳介背面の接触部位には、早期からハイドロコロイドドレッシングやポリウレタンフォームを予防的に貼付するスキンケア設計が、MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)の発生率を有意に低下させます。
「口呼吸患者」における口腔ケアと換気効率の是正
重症患者ほど苦しさから口呼吸になりがちです。口を開けたままネーザルハイフローを使用すると、せっかく鼻から入った高流量ガスが咽頭から口腔へショートカットして外へ漏れ出てしまい、肺胞へ届くPEEP効果が著しく減弱します。
それだけでなく、激しい気流の通過によって口腔粘膜は極度に乾燥し、唾液の自浄作用が失われてバイオフィルムや細菌の温床となります。これが誤嚥性肺炎を併発させる引き金になります。看護ケアとしては、以下のアプローチをルーティン化する必要があります。
- 保湿剤を用いた頻回な口腔ケア:乾燥した痂皮を無理に剥がすと出血を招くため、ジェル状保湿剤で十分に湿潤させてから愛護的に清拭・吸引する。
- 意識的な閉口誘導:患者の覚醒下では「できるだけ鼻から吸って、口を軽く閉じて息を吐いてみましょう」と呼吸法の促しを継続する。
- チンストラップの検討:著しい開口が持続し酸素化が得られない場合は、オトガイ部を軽く支えるチンストラップの使用を検討する。