「なぜ女性はホストを刺したのか?」――この問いを紐解くには、世間に大きな衝撃を与えた2つの象徴的な新宿ホスト刺傷事件の経緯を把握しなければなりません。表面的には「夜職の男女トラブル」と一括りにされがちですが、その内実には決定的な違いが存在します。
世間の記憶に最も深く刻まれているのが、2019年5月に新宿区のマンション一室で発生した事件です。当時21歳だった女性(高岡由佳元被告)が、同居していた当時20歳のホスト男性の腹部などを刃物で刺害。「好きで好きでたまらなかった」「彼を殺して自分も死のうと思った」と供述したその凄惨な現場写真は、血塗れの姿で佇む様子とともにネット上で瞬く間に拡散され、異様な注目を集めました。この事件におけるホスト刺した女の動機は、金銭搾取への恨み以上に、「相手を独占したい」「自分だけのものにしたまま命を絶ちたい」という極端な愛憎劇と共依存の暴走にありました。
対照的な構図を見せたのが、2023年11月に歌舞伎町の路上で発生した刺傷事件です。20代の女性が担当ホストをカッターナイフで切りつけたこの歌舞伎町ホスト事件では、背景に過酷な売掛金トラブルが横たわっていました。被害者ホストへ支払う売掛金(ツケ)を清算するため、女性は風俗店勤務を強いられ、心身ともに限界まで追い詰められた末の凶行でした。ホストを刺した理由は、愛情の破綻だけでなく、逃げ場を失った被害者の絶望と報復感情が引き金となった典型例です。